柏川悦夫さんご逝去


詰将棋もある程度慣れてくるとめったに感動しなくなる。
「んー,なるほど。うまいね」といった程度の心の揺れ具合。
そよとも揺らされない作品だと,短評を書くのに苦労する。
それで解答を出すのもだんだん億劫になってくる。


柏川さんはそんなだらけた解答者に新鮮な感動を思い出させてくれる作家だ。
いつまでも変わらぬ瑞々しさは本物の一流作家の証として尊敬していた。
「詩」の仲間と一度だけ訪ねて行ってお会いする機会を得た。
天才によくある「個性的」な方ではなく,ごく普通の方のように思えた。
ただ看寿賞や塚田賞の楯が狭い部屋に無造作に何枚も飾られていた。


紹介するのは一番最新の塚田賞受賞作。
70歳近いはずなのに,新手筋をこの完成度で仕上げて発表とは脱帽最敬礼しかない。




柏川悦夫




近代将棋 平成4年6月号/盤上流転149番