銀閣寺の庭園

銀閣寺。
すなわち京都東山慈照禅寺の庭園の美しさは格別である。

水・岩・木・苔といった自然の素材の中に,人工的な銀沙灘と向月台の配置が鮮やかに観音殿と東求堂を融け込ませる。

緑を基調として,アクセントに赤を用いるという極めて単純な構成である。まさに「奥義は基本の中に有り」ということなのであろう。

先程,「自然の素材」と書いたが,あくまで「素材」であることを見逃してはいけない。
確かに木も草も苔も生きているのだが,そこから感じるのは圧倒的な人間の作者の主張である。
ここに赤が欲しいな,という所にはきちんと南天が植えられている。ここの緑は厚みが欲しいな,という所はきちんと苔が盛り上がっている。
見事というほかはない。

「自然を大切にしましょう」などと主張する方々は激怒しなくてはならない。この自然な美しさは人の手の匂いが濃厚に漂っている美しさであるのだから。
しかし,この庭園はきりきりと美しい。

自然保護を主張する人々には,この美しさは創り出せまい。

美しさを産み出すのはあくまで人の業だからである。