伊藤正 氏への私信

詰将棋の詩」第75号(1981-12)に伊藤正氏が「僕が遠打を作らないわけ」という一文を書いています。

大幅に内容をカットして,結局なんで作らないかというと伊藤正氏が12才の6月に近代将棋(1973-6) に発表されたOT松田氏の次の作品が原因であるという。

初手99角。2手目同龍。このすっきりとした初形でなんと鮮やかに表現するものであることか。
傑作である。

伊藤氏は一文をこう締めくくっている。

さて,この手に衝撃を受け,今なおそれを保ち続けている六車君はどうしたか?勿論遠打の作品を作ろうと思ったのだ。(あの感動を自分の手で作り出したいというのはどの分野でもおよそ作る人に共通の心理であろう。)

ところがねぇ。ある程度作図能力が身についてから色々とやってみたのだけど……素材はかなりあったが,完成した姿を思い浮かべるとたちまち色あせて作る気がなくなってしまうのだ。

99角の魅力の呪縛,誰かほどいて!!

【カルタ】に収録しようとして,図らずも伊藤氏の呪縛を解く鍵を発見した。

この作品は,初手77角も成立する。残念ながら,余詰である。

おそらく森田氏の「近代将棋図式精選」に収録されなかったのは,この余詰が原因なのであろう。

伊藤さん。これが私からの白馬の棋士(?)による口づけです。呪縛は解けましたか? 遠打の傑作。楽しみに待っていますよ〜。